COLUMN

オーパス・ワン

スペック

【生産地】  アメリカ、カリフォルニア、ナパバレー

【生産者】  Opus One

【葡 萄】  カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン 他

オーパス・ワン誕生の背景

カリフォルニアワインの展開

カリフォルニアワインの最高峰であるオーパス・ワンは、フランス・ボルドーとカリフォルニアの代表的なワイナリーが提携して、1979年に誕生しました。
日本ではワインと言えばフランスのものというイメージですが、カリフォルニアも700ものワイナリーがあるワインの一大産地です。
1970年代からはブラインド・テイスティングでフランスのボルドーワインを打ち破り上位を独占するなど、この数十年で評価が急上昇しています。


近年のものと思われがちなカリフォルニアワインですが、その歴史は意外と古く18世紀まで遡れます。
当時メキシコ領であったカリフォルニアでは、キリスト教の伝導所の設立と連動する形で、葡萄の栽培とワインの醸造が行われていました。
19世紀になると、ゴールドラッシュなどの影響もあり、ワイン造りが一層盛んになります。
やがてカリフォルニアワインは欧州本国でも認められる品質となってゆきますが、1920年の禁酒法の施行により、ワイン造りは壊滅的な打撃を受けます。
禁酒法は1933年に撤回されますが、カリフォルニアワインが一流品と認められるのにはそれから数十年の時間を要することとなります。

カリフォルニア州ナパバレー

Napa

温暖な気候で知られるカリフォルニアは、葡萄の栽培に適した土地となっています。
日照時間が長く葡萄の糖度が高いため、法律でカリフォルニアワインへの加糖が禁止されているほどです。


オーパス・ワンの所在するのは、カリフォルニアのサンフランシスコの北約100kmにあるナパバレー(ナパ渓谷)。
全長50km、幅5kmの広大な盆地であり、盆地のために日中は暑く夜間は寒い気候です。
そして古くからの度重なる洪水によって堆積した地盤は、水捌けの良い土壌となっています。
こうした特徴から、ナパバレーはカリフォルニアの中でも特に良好な葡萄を収穫できる土地となっています。
今では全米のワイナリーの25%にあたる250のワイナリーがここに集中しています。


 


オーパス・ワンの二人の男

ナパバレーのロバート・モンダヴィ

オーパス・ワン

ナパバレーでワイナリーを経営していた一人が、後にオーパス・ワンを設立するロバート・モンダヴィでした。
ナパバレーを代表するワイナリーに生まれたロバート・モンダヴィは、より繊細なワインを造ろうとワイナリーの改革を切望していましたが、家族の反対に遭って頓挫してしまいます。


そこで1966年、彼が53歳の時に新たに設立したのが「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」でした。
このワイナリーで、近代的な技術を取り込みつつヨーロッパ的な細やかなワイン造りを行う手法を模索していったのです。
それから程ない1970年に、彼はフィリップ・ロスチャイルドと出会うことになります。


ロバート・モンダヴィとフィリップ・ロスチャイルド

オーパス・ワン

フランスのボルドーワインのワイナリーとして名高い、シャトー・ムートン・ロスチャイルド。
同オーナーであったバロン・フィリップ・ロスチャイルドは、1960年代からナパバレーのカリフォルニアワインに着目していました。
1970年、フィリップ・ロスチャイルドは、カリフォルニアのロバート・モンダヴィとハワイで偶然出会います。
そこでフィリップ・ロスチャイルドは、ロバートに新たなワイナリーを共同で興すことを提案。
しかしロバート・モンダヴィはカリフォルニアで自らのワイナリーを興したばかりであり、この提案を断ってしまいます。


それから6年後の1976年、後に「パリ対決」と呼ばれることになる有名ワインのブラインド・テイスティングが行われます。
結果、当時は二級品と位置付けられていたカリフォルニアワインが赤ワイン部門の一位に選ばれ、伝統あるムートンは二番に甘んじることとなりました。
そこでフィリップ・ロスチャイルドはロバート・モンダヴィの自宅を訪れ、再び新ワイナリーの設立を提案し、二人はジョイント・ベンチャーを始めることとなりました。
こうして1979年に誕生したのが、オーパス・ワンです。


「作品番号1番」

オーパス・ワン

オーパス・ワン(Opus One)という名称は、音楽用語で「作品番号1番」を意味します。
フィリップ・ロスチャイルドが、「一本のワインは交響曲、一杯のグラスは旋律」という考えから命名したものです。
また、伝統的なボルドーワインと革新的なカリフォルニアワインの二つの流れを汲むことを示すために、欧州圏と英語圏のどちらでも通用する音楽用語を用いたという理由もあります。


オーパス・ワンのエチケット(ラベル)は、白地に金色と青で構成されたシンプルなデザインで、他に例のない特徴的なものです。
そこにはフィリップ・ロスチャイルドとロバート・モンダヴィの、今は亡き二人の設立者の横顔とサインがデザインされ、オーパス・ワンが二人の「作品」であることが示されています。


オーパス・ワンのこだわり

伝統手法と近代技術

オーパス・ワン

オーパス・ワンは、「伝統的なアプローチは成果を最善にするためにのみ用いられ、現代の技術はワインの製造過程のためになるときのみ使用する」という方針を打ち出しています。
こうした方針に基づき、シャトー・ムートン・ロスチャイルドの伝統と、近代的な技術を、ワイン造りの各工程に必要に応じて取り入れています。


4つのエリアに区分されたオーパス・ワンの葡萄畑は、樹が1本当たり1平方mという極めて高い密度に植えられ、木々も35cmという低木に整備されています。
ワインに適した葡萄にするためには木の競争を促進するべきという独自の考えによるもので、近年は他のカリフォルニアのワイナリーでも取り入れられつつある手法です。


畑の手入れは、24人の高度な技術を持った作業員が手作業で行います。
それと同時に、生育状況のチェックには最新の技術が用いられています。
葡萄の葉は専用の装置で含水量やストレスが計測され、畑の各所にはセンサーが設けられて気温や湿度などが計測され続け、人工衛星も用いられています。


醸造とワイナリー

オーパス・ワン

醸造の各工程は、必要な手間を惜しみなく注がれます。
栽培された葡萄は手作業で選別されますが、この作業は念を入れて二重に行われます。
葡萄の圧縮は、機械を用いず重力だけで行わせるために、垂直方向に果汁が流れ落ちる構造が造られています。
貯蔵庫にはワインが整然と並べられ、壁に通されたパイプに流れる冷水によって冷やされます。


これらの設備を内包するワイナリーは、欧州各国の伝統的なものとは一線を画す近代的なものとなっています。
そのことについてオーパス・ワンは、「ワイナリーの構造とデザインは、そこで作られているワインの表現の一つ」であり、「繊細さと優雅さを備えるワインであるオーパス・ワンは、突然に完成するものではなく、ワイン醸造所もまた同様である」と述べています。


オーパス・ワン 2002

オーパス・ワン

オーパス・ワンは、カリフォルニアワインらしい濃厚な果実の味わいが、繊細かつ優雅な風味に仕上げられている逸品です。
タンニン由来の柔らかでしっかりした骨格と、高い次元でバランスが取れた風味は、伝統と技術に裏打ちされたオーパス・ワンならではと言えるでしょう。


MIDORIお勧めのオーパス・ワンは、2002年のもの。
この年のヴィンテージは、風味と品質を追求したことで1エーカーあたりの生産量が過去10年間で最も低くなり、希少なものとなりました。
2002年のオーパス・ワンは、カシスやブラックチェリー、プラム、エスプレッソなどの風味と、ドライ・ストロベリー、バニラ、モカなどの芳香が特徴です。
口に含んだ時には繊細で微弱な風味があり、飲み終わりにはビターチョコレートとやスモークのような薫りが残ります。


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