COLUMN

ジョニー・ウォーカー「ブルー・ラベル」

スペック

【生産地】  イギリス、スコットランド南西部

ジョニー・ウォーカーの最初の半世紀

雑貨商ジョン・ウォーカー

Kilmarnock

高級ウィスキーの代表的な銘柄であるジョニー・ウォーカーは、世界で最も飲まれているスコッチ・ウィスキーです。
ジョニー・ウォーカーの名前は、スコットランドのエアシア地方キルマーノックで1820年から雑貨商を営んでいたジョン・ウォーカーの名前から付けられました。


ジョン・ウォーカー、通称「ジョニー」は、食料品などと共にウィスキーも取扱っていました。
周辺で造られたウィスキーを小売店として販売するだけでしたが、当時はほとんど行われていなかった「ブレンド」を行っていた点が特徴でした。
ブレンドを行うことで、ウィスキーの味を整え、品質を安定させることができます。
ジョン・ウォーカーは、ブレンドに際して紅茶のブレンドの手法を応用しており、今で言う「ウィスキー・ブレンダー」の先駆けでした。

ジョニー・ウォーカーの胎動

ジョニー・ウォーカー

ジョン・ウォーカーは1857年に亡くなりますが、後を継いだ息子のアレクサンダー・ウォーカーが、経営規模をさらに拡大してゆきました。
1870年には、「四角いボトルに斜めに貼ったラベル」という、現在も使われているスタイルが採用されました。
この斜めに貼ったラベルの角度は、当時から24度と決まっています。


アレクサンダーは、1880年には首都ロンドンに拠点を移し、国内外へウィスキー販売を展開してゆきます。
しかし、いまだ「ジョニー・ウォーカー」という名称は存在せず、国内では「ウォーカーズ・キルマーノック・ウイスキー」、国外では「オールド・ハイランド」として販売していました。



ジョニー・ウォーカーの誕生

ジョニー・ウォーカー

20世紀に入ると、ジョンの孫のアレクサンダー2世に代替わりします。
そして1908年、1893年に買収していたカードゥ蒸留所のモルト・ウィスキーをベースとして、「ジョニー・ウォーカー」が誕生しました。
ジョン・ウォーカーが世を去って半世紀後のことでした。
このとき造られた「レッド・ラベル」と「ブラック・ラベル」は、世界で絶大な人気を博してゆくことになります。


シルクハット蝶ネクタイ、ステッキ、赤いコートに片メガネという格好のキャラクター、「スティングマン」が生まれたのもこのときです。
キャラクター・デザインは、米国の漫画家トム・ブラウン。
スティングマンとそれにちなんだ「Keep Walking」という名コピーによって、ジョニー・ウォーカーはさらに確固たるブランド・イメージを手に入れます。
このスティングマンは1950年と1996年の二回にわたり改編され、誕生から100年を経た現在では、シンプルでデザイン性の高いスティングマンが使われています。


ジョニー・ウォーカーの味わい

定番のジョニー・ウォーカー

ジョニー・ウォーカー

ジョニー・ウォーカーのそれぞれの種類は、主に色の名前で呼ばれており、風味も大きく変わります。



【レッド・ラベル】
「レッド・ラベル」は、スカイ島のタリスカーを中心として35の原酒をブレンドしており、ハイランド・モルトの華やかさと重厚さを兼ね備えた口当たりです。
他のジョニー・ウォーカーと異なり、レッド・ラベルそのものがブレンドしてもいいウィスキーとして造られています。

【ブラック・ラベル】
「ブラック・ラベル」は、カリラを中心に12年以上熟成させたモルトを40種類ブレンドしています。
レッド・ラベルと比べ、柔らかく奥行きのある口当たりをしています。
そのバランスの良さは「ブランディングの教科書」とも言われるほど。
ウィンストン・チャーチルのお気に入りだったと言われています。

日本では、かつて「高級ウィスキー」と言えばこの「ジョニ黒」だった時代がありました。
当時の市価は、酒税法等の影響もあり、平均初任給の倍に達したとされ、物価換算で今の100倍(!)。
「サザエさん」などの漫画にもしばしば登場し、海外旅行の定番のお土産でした。
「ジョニ黒」は、年配の方には今でも蟲惑的な響きがあるのではないでしょうか。

色々なジョニー・ウォーカー

ジョニー・ウォーカー

レッドとブラック以外にも、色々なジョニー・ウォーカーがあります。



【ホワイト・ラベル】
第一次大戦中には、「ホワイト・ラベル」というものも存在していました。
今はもう無いようです。

【グリーン・ラベル】
内容が他と一線を画すものとして、「グリーン・ラベル」があります。
ジョニー・ウォーカーの中で唯一グレン・ウィスキーがブレンドされていないものです。
名前の通り、海藻のような緑のイメージの香りがあります。

【スウィング】
見た目の変わったものとしては、「スウィング」があります。
これは1932年に登場したもので、輸送する船がどんなに揺れても大丈夫なように、底の丸いボトルに入っています。
アレクサンダー2世の最後の作品です。

【ゴールド・ラベル】
「ゴールド・ラベル」は、1996年に出来た高級版で、18年熟成のモルトをブレンドしており、蜂蜜のように甘くクリーミーな味わいをしています。
「クライヌリッシュ」を中心としてブレンドされ、ブレンド数は15種類に絞られています。
実は、ゴールド・ラベルは3代目のアレクサンダー2世が構想していたものでした。
当初の構想は第一次世界大戦で実現せず。
その後、後を継いだブレンダーが再度造ろうとしたものの、今度は第二次世界大戦で頓挫。
誕生するまでにそのような複雑な経緯を経ています。


究極のジョニー・ウォーカー

ジョニー・ウォーカー

そして、数あるジョニー・ウォーカーの中でも「究極」と謳われているのが、「ブルー・ラベル」です。
最高級品であるブルー・ラベルは、レッド・ラベルの10倍の価格で取引されています。


ブルー・ラベルは、19世紀に創始者ジョン・ウォーカーが特別な顧客のためにブレンドしていたと言われるウィスキーを再現したものです。
当時のブレンディング・レシピを基にして、厳選した原酒がブレンドされています。
詳細は明かされていないものの、ロイヤル・ロッホナガーをはじめとして、50年以上の熟成を経ているものばかり用いていると言われています。
それらの原酒を貯蔵する樽も、完成時の色を理想的なものにする色合いの木を選んで用いるほどのこだわりよう。
そして、世界で4000本しか生産されないため、一本づつシリアル・ナンバーが記載されています。


熟成の頂点に達した古酒をブレンドしたブルー・ラベル。
口に含むと、ビロードのような舌触りと馥郁たる香りが広がります。
奥深い風味と絶妙なバランスから、「究極」の名にふさわしい逸品と言えるでしょう。


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