COLUMN

グレンフィディック

スペック

【生産地】 英国スコットランドスペイサイド

【生産者】 William Grant & SonsGlenfiddick

グレンフィディック醸造所

「鹿ノ谷」のスコッチウィスキー


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グレンフィディックは、スペイサイドモルトのスコッチウィスキー。
スペイサイドモルトは、マッカランやザ・グレンリベットなども有名ですが、最も大量に飲まれているのがグレンフィディックです。
「グレンフィディック」という名前は、ゲール語で「鹿の谷」を意味します。


スコットランド最大の蒸留所群のあるスペイサイドは、アイラ島と双璧を成すスコッチウィスキーの産地です。
この地は北海に面したスコットランド北東部に位置し、その名の通りスペイ川の流域に広がる地域です。
この地で造られるモルトは花や果実のようなアロマが特徴で、海草のような芳香のアイラモルトと比べて女性的だと言われます。

 

グレンフィディックは高級志向でのブランディングを行っておらず、様々な国や階級の人たちに広く愛飲されています。
テレビドラマのモース警部シリーズで有名な作家コリン・デクスターも、グレンフィディックを好んでいます。

1887年クリスマスの創業

グレンフィディックを設立したウィリアム・グラントは、1839年にスコットランドのハイランド地方で生まれました。
7歳のときから丘で牛の番の仕事をしつつ、しっかりとした教育も受けていました。
それから靴屋や鉱山会社の事務員などを転々とします。
そして1866年、27歳のときに地元の蒸留所で簿記係となり、それが天職であると感じるようになりました。
我慢強く一途だと評されていたウィリアム・グラントは、すぐにその蒸留所のマネージャとなり、結婚して9人の子供を設けながら、20年間働きました。


1886年、47歳になったウィリアム・グラントは、兼ねてから夢見ていた自分の蒸留所の建設に着手します。
土地や資材、機械を購入にはそれまでに貯めたお金を充てましたが、決して潤沢なものではなく、蒸留器などは中古のものでした。
蒸留所の建設は、妻や子供たちを総動員して自力で行いました。
そして翌1887年のクリスマスの日、ついにグレンフィディック蒸留所は最初のウィスキーの醸造を成し遂げました。

以後、家族全員でウィスキー造りに従事してゆきます。

ウィリアム・グラント&サンズ

Laphroaig Whisky Distillery

グレンフィディック蒸留所が成功を収めつつあった1892年、ウィリアム・グラントは早くも次のバルヴェニー蒸留所を設立しました。
そうした中、彼の娘と結婚したグレンフィディック蒸留所の営業員チャールズ・ゴールドンが目覚しい活躍をします。
1909年、チャールズ・ゴードンは、グレンフィディックを輸出するために世界中を旅行し始めました。
そして1914年には、30の国の流通機構、および今日の180の国への会社の輸出が確立されました。
グレンフィディック蒸留所の拡大をよそに、1923年にウィリアム・グラントは84歳でその生涯を閉じました。


ウィリアム・グラントの始めた造酒業は、「ウィリアム・グラント&サンズ」という会社の名義で展開され、グレンフィディックやバルヴェニーの他にも、現在ではグランツ(ウィスキー)やバルベニー(ウィスキー)ヘンドリックス(ジン)、セーラージェリー(ラム)といったブランドも保有しています。
ウィリアム・グラント&サンズは家族経営が続いており、スコッチ・ウィスキーではディアジオ、ペルノーリカールに次ぐ世界で3番目のシェアを誇っています。
2008年、英紙サンデータイムズの「リッチ・リスト」において、ウィリアム・グラントの家系はイギリスで86番目、スコットランドで3番目の富豪であると格付けされました。

シングルモルトウィスキー「グレンフィディック

火と水と土のウィスキー

グレンフィディックの成功の理由は、3点挙げられます。
まずは、他社に先駆けてシングルモルト用のウィスキーとして販売を行ったこと。
1960年代の戦後復興期において、ウィスキーはブレンデッドで飲まれるのが普通でした。
しかしグレンフィディックは、1963年に貴重な原酒をそのままシングルモルトとして販売。
これが効を奏し、市場に一気に拡がっていきました。

 

また、ウィスキーとしてはデザインを重視してきたことも理由の一つです。
例えば、グレンフィディックを特徴付ける三角形のボトル。
これはウィリアム・グラント&サンズ社のグランツのボトルを援用したもので、「火、水、土(ピート、大麦)」というウィスキー造りの三大要素を象徴したものです。

 

そして、初代のウィリアム・グラントからの家族経営も成功の要因でした。
ウィスキーをシングルモルトで売ろうという当時としては無謀な試みも、大企業ではないからこそ成し得たことです。
また、1969年にはスコットランドで最初にビジターセンターを開設して観光客を受け入れるなど、愛飲者へのきめ細かいサービスもまた家族経営ならではの方策でした。
今では、グレンフィディック蒸留所自体が、一つの観光地となっています。

グレンフィディックの製法

グレンフィディックの製法は、大麦麦芽を直火焼き蒸留し、スペイサイドの軟質の湧き水を用いて完成させるという、伝統的かつオーソドックスなものです。
蒸留からボトリングまでの全ての工程を、グレンフィディック蒸留所で行っています。

 

原料となる大麦は発芽させられ、加熱した後で水とともに粉砕されます。
どろどろになった麦粉は、芳香を撒き散らしつつ糖化が行われてゆきます。
原料は高さ5メートルの巨大な発酵槽で冷却され、そこで激しく発酵が進みます。
64時間にわたって熱と泡と発生させた後は、アルコール度数8%程度の褐色の液体となっています。

 

蒸留には、かつてウィリアム・グラントが購入した直火式蒸留器と同じ形状のものが、約30基用いられます。
この規模は、モルトウィスキー蒸留所としては世界最大のものです。
蒸留された原酒は、アメリカン・ホワイト・オークの樽に詰められて、ゆっくり熟成させられます。
全ての作業を一環して蒸留所内で行うため、高度な品質の管理を実現しています。

 

グレンフィディックは、年間最大90万ケースというングルモルトとして世界一の出荷量を誇ります。
シングルモルトで年間50万ケースを越えているのは、他にはマッカランとザ・グレンリベット、グレングラントしかありません。
そしてグレンフィディックはさらに拡張すべく、年間100万ケースの出荷を目指すキャンペーンを展開し、約50億円の投資を行いました。
今後も製造量は拡大し続けてゆくことでしょう。

グレンフィディックの種類

【12年「スペシャルリザーブ」】
色:とても淡い金色
香り:洋梨やレモンを思わせるみずみずしくフルーティーな熟成香
味わい:ミディアムボディー
口当たり:繊細で滑らかなコク
アフターテイスト:軽やかな後口

 

【15年「ソレラリザーブ」】
色:金色
香り:甘くフルーティーな熟成香に、バニラや蜂蜜の香りの厚み
味わい:ミディアムボディー
口当たり:スムーズで力強いコク
アフターテイスト:余韻が豊か

 

【18年「エンシェントリザーブ」】
色:赤みを帯びた金色
香り:シャリー樽由来の深くやわらかな芳香に、バニラや蜂蜜の香り、オークの香り
味わい:フルボディー
口当たり:甘み、厚みのある洗練されたコク
アフターテイスト:ナッツを想わせる温かみのある後口

 

【30年】
色:深い琥珀色
香り:シェリー樽由来のフルーティー香に長期熟成ならではの重厚なウッディネス
味わい:フルボディー
口当たり:ハニーイッシュな甘みと重厚なコク
アフターテイスト:長く豊かなアフターテイスト

 

グレンフィディック サントリーウィスキーより)

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