COLUMN

ボンベイ・サファイア

スペック

【生産地】 英国、チェシャー州

【生産者】 ボンベイ・スピリッツ社

【度 数】 47.0

ボンベイという言葉

インドとマラリア予防

10種類のボタニカル

ボンベイ・サファイア――インド有数の都市の名を冠するこのジンの歴史は、1761年のインドにまで遡ります。
250年前のインドは、大英帝国の東インド会社の統治下にありました。
ここでマラリアに悩んだ英国人は、予防のためにキニーネとトニックウォーターを混ぜたものを飲用していました。
やがて、美味しく飲むためにジンも加えるようになりました。
このマラリア予防のための飲み物が、現在のボンベイ・サファイアのルーツとなります。


18世紀の東インド会社で生まれた一風変わったジンは、英本土でも飲まれるように。
そして20世紀に入り、二つの大戦を経ても、ランカシャーで造られ続けていました。
このジンは、「プレミアム・ロンドン・ドライ・ジン」という分類で、インドの頃と変わらぬ昔からの製法が用いられていました。
1950年代、あるアメリカ人がこのジンに英国で出会い、アメリカに持ち込んだことで、「ボンベイ・サファイア」として花開くこととなりました。

ヴェイパー・インフュージョン

ボンベイ・サファイア種のワイン

ボンベイ・サファイアは、独特の柑橘系とスパイスの香りが特徴です。
この風味は、独自の製法によって作り出されています。


一般のジンは、ボタニカル(植物の種や実など)をスピリッツに直接漬けて香りを付けます。
しかし、ボンベイ・サファイアでは、用意したボタニカルを銅製の籠に入れ、そこに蒸留したスピリッツの蒸気を通過させることで香りを吸着させるという方法をとっています。
このヴェイパー・インフュージョン製法(蒸気注入法)と呼ばれる製法を用いることで、ボタニカルの余分な雑味を含まない純粋な香りを吸収することができるのです。
蒸留に使われる蒸留器は、世界で数台しかない残っていない「カーターヘッド・スチル」型のうちの3台が、ボンベイ・サファイア専用として使われています。


ボタニカル以外の原料は英国製にこだわっており、原酒となるスピリッツは全て英国スコットランド地方の穀物から作られています。
加水する水も、ウェールズ地方のヴェルヌイ湖の水が用いられています。

10種類のボタニカル

10種類のボタニカル

ボンベイ・サファイアの独特の風味は、秘密の配合バランスによって用いられるボタニカルによって形作られます。
ボタニカルは、一般のジンでは4、5種類しか用いませんが、ボンベイ・サファイアでは10種類が用いられます。
世界各地の材料を広く使っていることに、英国が海洋帝国だった時代を想起させられます。


【リコリス(中国産)】
クールで独特なボンベイ・サファイアの味を醸し出す


【アーモンド(スペイン産)】
澄んだ豊かな風味をもたらし、木の実の香りがスピリッツ全体を力強くする


【レモンピール(スペイン産)】
ピールの香りと味によってスピリッツを特徴付けるとともに、他のボタニカルを引き立てる


【ジュニパー・ベリー(イタリア産)】
ジンに欠かせないボタニカルで、ドライな香り高さを演出する


【オリス(イタリア産)】
スミレのような香りとあいまってエキゾチックな彩りを加える


【アンジェリカ(ドイツ・ザクセン産)】
甘くドライで松の実のような味わいで、心地よい後味を生み出す


【コリアンダー(モロッコ産)】
レモンやオレンジのような風味を与える


【桂皮(インドシナ産)】
軽いシナモンの香りが甘さのあるスパイシーな風味を与える


【クペバ(ジャワ産)】
つぶして加工することで、コショウや松のような風味を加える


【グレインズ・オブ・パラダイス(西アフリカ産)】
コショウの刺激とほのかなラベンダーとチョコレートの香りで、エキゾチックな風味を加える


サファイアのスピリッツ

ボトルとグラスのデザイン

ボンベイ・サファイアのデザイン

ボンベイ・サファイアのボトルは、その名の通りサファイア色の透き通った青が美しい四角いものとなっています。
ラベルには、ヴィクトリア女王の肖像が描かれています。
ヴィクトリア女王は、イギリス領インド帝国が成立した時の君主であり、ボンベイ・サファイアのルーツを示しています。
ボトルの側面には、前述のボタニカル10種がエッチング加工で描かれています。


ボンベイ・サファイアは、他の主要な洋酒ブランドと同様に、芸術やデザインの分野を重視して支援しています。
例えば、新たなグラスのデザインを追求するため、多くのデザイナーの参加するグラスのコンペティションを毎年行ったりしています。


日本人の手によるボンベイ・サファイアのイメージのグラスも、毎年発表されています。
変わったところだと、独特の作風の芸術家である草間弥生や、脱力した作風のイラストで知られるリリー・フランキーもボンベイ・サファイアのためのグラスをデザインしています。
こうした人選に、「伝統」という言葉に捉われずに芸術を追求してゆく姿勢が垣間見えるのではないでしょうか。

レヴェレーション/天啓

ボンベイ・サファイア・レヴェレーション

ボンベイ・サファイアの最上級版として、「レヴェレーション(天啓)」というものがあります。
「世界一贅沢な蒸留酒」を作るとの目的で、クリスタルで有名なバカラ、宝石のガラード、そしてエジプト人デザイナーのカリム・ラシッドの3者によって作られたものです。


レヴェレーションは5つだけの限定生産で、合計すると100万ドル。
ボトルはハンドメイドのクリスタルで、10種類のボタニカルを表すために10面カットとなっています。
蓋にはダイヤとサファイアがあしらわれています。


ボンベイ・サファイアの楽しみ方

ボンベイ・サファイアの楽しみ方

ボンベイ・サファイアは、柑橘系の香りとスパイスの香り、そしてジン特有のジュニパーの風味で構成されます。
口に含むと10種類のボタニカルによって次々と展開される香りは、以下のように表現されます
「100%フレッシュでナチュラルな香りが一つになって、味わいが層をなすように、優しいアロマの味わいが広がる――軽い刺激のある柑橘の味、デリケートなナッツオイルの風味、リッチでエキゾティックなスパイスの味、かすかな甘みが広がり、最後に軽いラベンダーの香りが現れ、ペッパーの爽やかな後味が残る」


ボンベイ・サファイアは、カクテルの材料としても多用されます。
クラシック・カクテルだけでなく、現代的なカクテルにも使われています。
伝統的にはウォッカでつくられてきたコスモポリタンやブラッディ・マリーのようなカクテルをボンベイ・サファイアで作るといった使い方もされるようです。


カクテルにせずとも、ボンベイ・サファイアの重層的な風味は、単品で既にカクテルのようなものであるとも言えます。
MIDORIでは、お客様の好みに応じて、生ライムを添えたり、炭酸水やトニックウォーターで割ってお出ししています。

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